登山人口が増える事は大変喜ばしいことですがその結果思わぬ事故も増加しています。 去年の夏におこった北海道の「トムラウシ山遭難事故」や今年埼玉の秩父での救助ヘリコプター墜落事故も原因は女性登山者が沢からの転落死が原因であり、墜落事故を取材に行った日本テレビカメラマン、ディレクターが沢で遭難し死亡しました。 救助要請のあった女性1名、救助ヘリコプターの救助隊5名、日テレカメラマン2名の計8名で今年最大の山岳事故(去年のトムラウシ山も死者8名)となりました。
山岳事故は何故起こるのでしょうか? それは登山者の「天気」に対しての認識不足です。 「雨降り」に対する認識不足でしかありません。 天候に恵まれればほとんど事故は起きません。
「山の天気は変り易い。 だからカッパを持っていけば大丈夫!」だと思っていませんか?
安全で楽しい山登りを実現するために「山の天気」の特徴・注意事項を私なりに述べたいと思います。
(積乱雲のメカニズム)
山は標高が高い(あたりまえですが・・・。)当然雲に近い為、平野部よりも雨になる確率が高いです。
では雲ひとつない夏の山でいきなり雷雨になるのはどうしてでしょう。
図1は夏の午前中を絵にしたものです。 真夏の太陽は平野部、山間部に降り注ぎます。 熱せられた空気は上昇して行きます。 同じように熱せられるのであれば平野部の上空にも上昇気流が発生するのではと思われる方も多いはずですが、実際には地形が影響してきます。 山間部の地表部分は熱で上昇しますが地表から離れた位置では気温は上がりません。 従って、上昇気流は山で発生します。
夏の午前中 |
積乱雲へ急成長 |
この時に出来る雲の高さは数キロに達すると言われています。
積乱雲が完成の状態ですが、この時点では雨はまだ降りません。
実際に雨が降るのはこの巨大な雲の塊が上空に流れる風によって移動した場合に雨が降ります。 これは 積乱雲が移動することにより気温の低い場所に移動し、水蒸気が冷やされ水滴→雨へと変化するためです。 この現象は高度の高い所で起こり、遥か上空から落下し水滴は大きくなり、その摩擦の影響で静電気を帯びます。 これがどしゃ降り、雷雨の原因になります。
夏に起こる積乱雲による雨は短時間で大雨、雷を伴います。 場合によってはダウンバーストとよばれる強風も引き起こします。 夕立と同じで短時間で降やみますが、沢や川の増水、鉄砲水、場合によっては土砂崩れも起こります。 これら自然災害に対し我々登山者は為す術がありません。 「かっぱ」を着た所でなんの役にも立たないのが理解できるでしょう。 「かっぱ」はだ他端に「雨」に濡れないと言うだけで、自然災害から身を守るライフジャケットではありません。 (トムラウシ山の遭難事故で犠牲者になられた方々全て、「カッパ」を着用していました。
【ではどうしたらよいのでしょう?】
雨を避ける事です。 積乱雲(入道雲)が原因の雨は夕立と同じで短時間で止みますが、降水量は多く、沢の水位が急激に上昇したり、鉄砲水が発生したりします。 この場合、沢のルートは避けるべきです。
積乱雲は夜中には発生しません。 朝~昼(14:00ぐらいまで)までは成長段階にあるため雨は殆ど降りません。 沢・滝を通るルートは14:00前後までに下山する計画を立てましょう。
積乱雲が登ろうとする山に発生している場合麓から簡単に見て取れますが、登山中には殆どわかりません。 積乱雲が発生しているかどうかは下記の事に注意してください。
- 急に空が暗くなった。
- 朝から蒸し熱く、無風状態が続いている
- 周りの山に積乱雲が発生している
- ラジオからガーガーとノイズが出始めた(雷が原因)
- 14時過ぎである
発達した積乱雲は上空に吹く風向きにより移動すると書きましたが、この風向きはその山の地形や過去の沢の状況からある程度判断出来ます。
宝満山は三郡連山の一番西に位置し、この連山上で発生した積乱雲は南西の風にのり難所ヶ滝、昭和の森(糟屋郡宇美町方面)へと動くことが多いです。 難所ヶ滝をもつ河原谷等に移動し雨を降らせる事が多いみたいです。※正面登山道は宝満山の西面にあるため比較的雨が少ないと言えます。
(危険な沢の見極め方)
- 水量が常に多い
- 大型の砂防ダムがいくつもある
- 沢にある石に草木・苔が生えていない
これらのことが確認されればその沢は大雨の時増水を起こしていると見てよいでしょう。
夏の午後はこの沢には近づかない方が無難です。
ここに述べているのは真夏におこる「積乱雲」がもたらす急激な雷雨について述べました。
従って真夏以外は天気図や気象レーダーを確認して登山するように心がけましょう。
次回は携帯電話で天気を見る、ゴアテックスとは・・・。を予定しています。
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